大湯元 山田旅館(長野県)




■大湯元 山田旅館(小谷温泉)
 ・黒瀬的オススメ度 : ★★★★★★★★★☆
 ・訪問時期 : 2016年06月
 ・住所 : 長野県北安曇郡小谷村中土18836(参考)
 ・電話番号 : 0261-85-1221(参考)
 ・営業時間 : −(参考)
 ・泉質 : ナトリウム-炭酸水素塩温泉(中性低張性温泉)
 ・PH値 : 6.8(元湯)/6.9(新湯)
 ・湯温 : 44.5℃(元湯)/48℃(新湯)
 ・TAG : <名湯百選> <源泉掛け流し> <低張性> <中性>
 ・HP(参考) : 小谷温泉 大湯元 山田旅館 公式ホームページ

大湯元 山田旅館


大湯元 山田旅館(露天)



【寸感】
信州は新潟との県境、妙高戸隠連山国立公園の山腹にある名湯百選「小谷温泉」の宿。

明治時代にドイツで開催された万国霊泉博覧会に置いて、日本を代表する温泉として「別府・登別・草津・小谷」を政府が推しただけはある湯。
建物は江戸時代に建造されたままの姿を残し、有形文化財に指定されています。

開湯は1555年、武田信玄の家臣「岡田甚一郎」の夢枕に現れた観音様のお告げによるらしく、現夢の湯といわれ万病に効く名湯として知られているとのこと。
ここでも武田信玄が絡むのかと思いつつ、武田信玄が絡む割には珍しく(?)45℃前後の湯です。

さて、温泉の話しに移ります。
泉質はpH6.8〜6.9のナトリウム-炭酸水素塩温泉(中性低張性温泉):(重層泉)。
アルカリ由来の脱脂効果ではなく、成分由来で体の脂分やら汚れやらが落ちていく感覚をたっぷりと味わえます。
まあ、源泉を頭から被っていると髪がごわごわになるんですけどね!
浴感にも薄いながらぬるぬる感があり、保温には優れていないものの保湿面はかなりのものです。

浴場は源泉風呂(内湯のみ)・展望露天風呂+内湯(外湯)に完全に分かれていて、それぞれ源泉も異なります(とはいえ泉質は一緒だが)。
当然のことながら隣接していないので、内湯に入ってすぐ外湯もというわけにはいかず、着替えて移動という一テンポ間を置く必要あり。

温泉は飲泉可能で、一日上限200mL〜1Lとたっぷり頂けるものの、外湯と内湯で味が異なるように感じた。
内湯はそこかしこの重層泉と差のないまろやかな味わいだが、外湯の方はここに若干金属味と苦みが混じる味わい。
「飲む」ということを前提に置くと、明らかに内湯の方が飲み易さを感じました。
(黒瀬飲泉時の体感)

含有成分的にも外湯の方がちょっぴり成分豊富なので、この差かなとも思いましたが味に直結する差はないんですよね……。
鮮度の違いかも知れません。
ちなみに、含有成分で特筆するべき所は、まず源泉風呂(内湯のみ)で言うと、ナトリウムイオン(672.4mg/1kg)、炭酸水素イオン(1960mg/1kg)、メタケイ酸(62.5mg/1kg)、メタホウ酸(10.6mg/1kg)、遊離二酸化炭素(411.3mg/1kg)。
展望露天風呂+内湯(外湯)では、ナトリウムイオン(809.1mg/1kg)、炭酸水素イオン(2319mg/1kg)、メタケイ酸(64.9mg/1kg)、メタホウ酸(13.3mg/1kg)、遊離二酸化炭素(444mg/1kg)。
ここに基準に届かないながら、ストロンチウムイオンやバリウムイオンなども入っています。

湯船の構成に移りますが、まず源泉風呂(内湯のみ)は年代物の打たせ湯、年代物の寝湯があります!
寝湯は石質の浴槽の縁を削って設けたもので、そこに枕木を置いて大人一人が寝転ぶ感じ。
黒瀬はまさにカルルス温泉「鈴木旅館」さんの、湯船の縁に寝転ぶあの特異な入浴方法を連想しました。
打たせ湯も壁を刳り抜いた感じで大人一人がすぽっとはまるスペースに、湯の注ぎ口兼打たせ湯というイメージで存在しております。
寝湯・打たせ湯ともに一つの湯船に直結しており、繁忙期は狭さを感じることになりそう。
ちなみに、内湯はシャワーもなく本当に時代を感じさせる作りです。

展望露天風呂+内湯(外湯)は割と新し目であり、シャワー完備。
蛇口を捻っても温かいお湯が出ず、最初は首を捻りましたが、しばらく湯を出しっぱなしにしているとちゃんと暖かいお湯が出てきます。
こちらは湯船の構成が内湯一つに、露天が一つ。
露天風呂は新潟と信州の県境にある秘境の山々を遠望することができ、秋口とか冬場とかは壮観だろうなぁという印象。
どちらも、サイズはパーソナルスペースを考慮すると5〜6人が目一杯。
日帰りも可能(10:00〜15:00)なので、繁忙期は十分なスペースとは言えないんじゃないかと思うものの「……繁忙期?」という気もする。

一方で褒められた点でないところは、アメニティ。
カミソリがないのはまあ良いとして、部屋にバスタオルもティッシュもない。
いや、バスタオルがないってさあ……。

さらには浴場には、ボディソープがなく石鹸とリンスインシャンプーのみ。
「石鹸only」っていうところが時代を感じさせるというか、客層が窺い知れるというか、割り切っていて潔いというか。
宿泊予約もインターネットからは不可であり、電話での申込みとなる。
日時が近づくに連れ「あれ? ちゃんと予約できてるんだよな?」という不安を味わえます。

なお、黒瀬申し込み時は、長期の湯治客で宿泊可能日が限られるという話、且つ、当日も非常に込み合っているということを事前に説明されたのだが、いざ蓋をあけてみると温泉に長時間浸っていたにも関わらず、黒瀬が他の湯治客と顔を合わせることはなかった。
……湯治、客?

食事時には確かに相当数の人がいたが、皆さん、アルコールを摂取したりと確かに湯治って感じではない。
まあ、ゆっくり浸れたんでいいんですが。

部屋についても特筆することが一点。
和歌山・龍神温泉「上御殿」同様(同じく有形文化財指定)、外から鍵を掛けることができません。
部屋にいる時は中から内鍵を掛けることはできますが、外出時の施錠は不可です。
とはいえ部屋には金庫があるので、外出時(入浴時)は金庫へ貴重品を入れ鍵をフロントに預ける形になります。
尤も、お世辞にも金庫のサイズは十分とは言えない為、最初からフロントに預ける用の鞄を一つ用意して置いた方が良いかも知れません。

ここからは蛇足。
明治政府が推した四つの温泉地って明らかに「登別(カルルス)」だけ格下じゃないですか?
え? 名湯百選「カルルス温泉」? 湯治向きの温泉地でリーズナブルで良い湯だけれど、全てに足を運んだ黒瀬としては別府・草津が強ネーム過ぎて相手になっていないとさえ感じます……。
湯質で勝負っていっても……。

それを踏まえて、小谷温泉も衰退っぷりが半端ないと感じました。
カルルス温泉以上じゃないですか?
尤も、周辺に観光地がなく、本当に山登り・湯治以外に足を運ぶ理由がないから仕方ないっちゃあ仕方ないのかも知れませんが、湯が最高なだけに本当にこのまま衰退していくのは勿体ないと思いますぜ。
色々と不満点や不便と感じる点もありますが、時代に取り残されたところ(酷い文面だな……)も強みに感じるんですけどね。
世俗の喧騒を離れて、ゆっくりできますよ。

総括して湯は最高。
群馬・法師温泉「長寿館」や和歌山・龍神温泉「上御殿」のような特別感のある体験もできる。
かなり甘目の評価ですが、正直ベース8.1〜8.5の切り上げで「9」の評価としたい。


【三行】
 ・明治時代にドイツで開催された万国霊泉博覧会に置いて、日本を代表する温泉として明治政府が推した温泉地の内の一つ。
 ・建物は江戸時代に建造されたままの姿を残し、有形文化財に指定されています。
 ・部屋は外から鍵を掛けることができません。最初からフロントに預ける用の鞄を一つ用意して置くの方がベストかと黒瀬は思いました。




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