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Seen00 -conference-


 床も壁も天井さえも、そして蛍光灯の明かりさえ白色の広大な部屋。その部屋の中心には十数人が一堂に会して会議を行えるガラス製の巨大な楕円の長テーブルがあり、十数個程の見た目に立派な木製の椅子が備わっていた。椅子は疎らに七つ程が埋まっていたのだが、到底ここにある全ての椅子があと2〜3の僅かな人数で埋まるのかと言えばそうではない。
 部屋は適度に空調が整えられていたのだがこの場に顔を揃えている面子間での会話がない所為か、その空調の音も「コォー」と耳に付くほどに強調されている。そんなある種不自然な空間がその部屋であった。
「浦野(うらの)君、そんなところに突っ立っていないでこちらに来て座ったらどうだい?」
 白髪に加えて、片方の鍔を上方向に折りピンで留めた特徴的な帽子を被った老人が唐突に口を開いた。それはこの白色で統一された部屋の出入り口付近に直立不動でいるスーツ姿の肩幅の広い男「浦野」に向けた言葉である。
「いえ、伏井(ふくい)様、私はこの会議の場に座って発言する権限を持ってはおりません」
 浦野は顔色一つ変えることはなく、「これが自分の仕事である」と言う確固たる信念でもあるかの様に、丁寧な口調でその老人「伏井」に向かって返答をしたのだが、対する伏井は続ける言葉で浦野を諭す。
「なに……ここに座して発言をしろと言っているんじゃない。それに全員が揃ったところでここに並べられた座席が全て埋まるわけでもないんだ」
 歩行の補佐が使用用途と言うには明らかに長過ぎる杖でトントンと隣の座席を叩いて話す伏井は顎をしゃくって「どこでも好きな所に座りなさい」とも促した。浦野は困惑気味の表情を見せながら、その一連のやり取りを静観していた白衣姿の初老の男へと向き直った。浦野に取ってそれは白衣の初老に「それは出来ないこと」と、伏井を説得して貰う為のものだったのだが、浦野の期待に反する言葉が白衣の初老の口からは切り出された。
「それは名案ですな、……どうせ会議が始まったところで成果について儂から一方的な説明が為されるだけで、この場は意見交換の場にはなりはしないのだからな」
 浦野はすぐに白衣の老人「プロフェッサー」に向け異論を挙げる。端から見ていれば、そんなことに対する拘りなど些細なものの様にも見えるのだったが、どうやら「浦野」に取ってはそれは重大な問題となり得ることらしい。
「プロフェッサー、しかし……!」
「好意には甘えておくものだ、浦野」
 浦野は「私如きが末席を汚すわけにはいかない」とでも思っているようで、プロフェッサーの言葉を受けてなお簡単に引き下がる気はないらしい。既に椅子に座して会議が始まるのを待っているプロフェッサー、そして伏井らに取ってはそんなことは問題と捉えるまでもないものであることは言うまでもないだろう。まして、彼らに取ってこの場に顔を揃えていると言うことは即ち、既に「同類」であり「同士」であることは否めないことなのだから……である。
「はは……君は規律に厳しすぎる、規律だけを重要視して臨機応変さがない場合には上分別は生まれないものだよ?」
「……はい、矢倉(やぐら)様、それは心得ていますが……」
 浦野は自分が座席に座るように言う三人目の男「矢倉」の言葉を受けてそれまで以上の苦渋の顔を見せた。
 矢倉は一見すると浦野と同年代か、もしくは上を見ても一つ二つが精々の、ここに顔を揃える中ではプロフェッサーそして伏井と言った老人達とは一線を画す若さを持った男である。髪色も茶色に染められたもので、濃紺で上下を揃えたスーツにしても春先に街で見掛ける新入社員の様な若々しさを持っていた。
 そしてもう一人、一線を画す若さを持ち、かつ七つの座席が埋まる中で紅一点の女がこう口を開いた。
「あはは、おかしいの、浦野さんが困ってるなんて」
 腹の底からおかしそうにクスクス笑う女の様を見て、浦野は明らかにこの場の他の面子には見せない険しい目つきで女を見た。「……」と浦野は黙ったままで、その女に何かしらの言葉を向けることはなかったのだが、言葉にすると「後で覚えておけよ?」と言った具合の意味合いがそこにはあっただろう。
「うー……、怖いー、浦野さんがわたしを睨んでる」
 年齢的なことを言えば間違いなく浦野・矢倉の下を行く。小綺麗に整った顔立ちもさることながら、右前髪だけを胸元まで伸びし、その他の部分は首の中ほど程度で切り揃えた髪型が印象的で、はっきりと隠すことなく感情を前面に押し出す表情が特徴的だ。そして、その小綺麗な顔立ちからは想像も出来ない様な子供っぽさを各所に見せながら、女は「怖い」といったその言葉通り、怯える様な仕草を見せて顔を顰めた。
「はは……はははは、これは傑作だ、浦野ともあろう男がな」
 そんな一連のやり取りを見ていたプロフェッサーはおかしくて堪らないと言わんばかりの笑い声を上げた。「プロフェッサーッ!」と非難の声をあげた浦野だったのだが、全く意図せぬ方向から「ドゴンッ!!!」とガラス製の机を掌で叩くけたたましい音がこの会議室内に鳴り響いて、……状況は再び緊張度を増したものに一転した。
 徐に立ち上がる中年、小太りの男。不機嫌な表情でこの場に顔を揃える一同を見渡しながら、彼は勿体ぶった調子でこう口を切る。
「すまないが我々はここに雑談をしに集まったわけではないのでね」
 淡々としたその言葉は伏井、そして矢倉を見下げる様な態度を持っていた。伏井にしても矢倉にしてもそんな態度に対して色を正し、一瞬にしてその場には険しい雰囲気が立ち込めたのだが、男はそんなものを気にした風は見せずに澄ました顔をしてプロフェッサーへと向き直るとこう問い掛けをした。
「……もうそろそろ始めてしまっても構わないだろう?」
「ふむ、それもそうか」
 プロフェッサーは思案顔を見せた後で、グルリとこの場に顔を揃える一同に視線をやって各々に同意を求めた。そこに首を横に振る者はなく、男の要求は聞き入れられることとなる。
「しかし情操を育てるのには他者とのコミュニケーションがものを言うのだよ、孝山(たかやま)君?」
 不意に思案顔をして孝山へと向き直ったプロフェッサーの口からはそんな言葉が漏れたのだが、小太り中年の男「孝山」はドカッと椅子に腰を下ろすと「そんなことは自分には関係のないこと」と、そう言わんばかりの態度を見せる。
「それはこの会議が終わった後にでも、そちらでゆっくりとやったら良いんじゃないのかね?」
 孝山を見るプロフェッサーの目の色に何かしらの変化を見て取ることは出来なかったが、そこに微かながら感情の色が混ざったことを記述しておく。
 そんな雰囲気を気に止めた様子を見せることなく、その直ぐ横では伏井が女に向き直って会話をしようと試みているところだった。意外にも浦野・矢倉を始めとする他の面々も、一部を除いてその伏井と女とのやり取りを静観する状況がそこに存在していた。孝山がそうやって言葉を荒げることなど、いつものことと言わんばかりの対応だ。
「お嬢ちゃん、名前を聞いておこうか?」
 伏井は自分の孫にでも向ける様な和らいだ表情をして問い掛ける。見た目に相応するやり取りではないながら、そこに不自然さは感じない。それは伏井の年齢を基準としてその孫と言うことを考えるからなのだろうが、問題はそんなことよりも、そこに見た目に相応する女の……年相応の対応がないことだろう。
「……名前って、何?」
 真顔で切り返す女に対して、ここに来て始めて伏井が困った様な表情をした。そうして振り向き様にプロフェッサーに「どんな対応をすれば良いのかね?」と、視線で尋ねる。伏井の視線の先を追う様に、その質問を携えたまま女の視線もプロフェッサーへと向いた。
「おぉー……、まずはこの娘に名前を与えなければ肝心の会議も始まらないな」
 それに対してプロフェッサーは如何にもわざとらしい、まさに「そうだった」と、たった今気付いたかの様な仕草を取って見せた。伏井がそれをこの場にいる誰よりも「憎い演出」と感じた様で、……殊更「してやられた」と言ったさも楽しそうな笑みを見せた。それもすぐに小難しい思案顔へと変わって、伏井は「うーむ……」と唸り始めたのだが……。
「どうだろうか、ここで皆さんにまずはこの娘の名前を決めて頂くというのは?」
 グルリとプロフェッサーが見渡した一同の表情は千差万別だった。大半が特に反応を返さない、賛成とも反対とも意志を示すことのない顔付きをしていたのだが、……だからこそそこに異論を挟むものはいなかった。
「名前を決めるその間に残りの面子が来ない場合はそのまま会議を始めることにしたいと思う。では名前を募ろうか?」
 誰かから何かしらの言葉があがるよりも早く、カタンッと椅子を鳴らして男が立ち上がった。わざわざ椅子を鳴らして立ち上がった行動がこの場に会する面子の注目を集める為のものだったことを、徐に口を開いた男の挙動が示していた。
 わざわざ全員がそちらに向き直ったことを確認してから大きな身振り手振りを交えて口を切ったのだから、ある程度この場で女の名前を決めることになるだろうことは予測出来ていたのだろう。そしてそれは状況を理解出来ずにキョトンとした顔で周囲をキョロキョロと窺うこの「女」に対して、男が相応の期待を抱いていることを同時に示唆していた。
「ふん、国見千宗(くにみちひろ)と言う名前はどうだね、皆さん?」
 孝山がやって見せた様にこの場の一同をグルリと見渡しながら、彼はこう名前の由来を説明する。
「この国の行く末を見守る存在となり、また幾千と存在する我々と同質の望みを持った組織の、戦略・戦力の中心(宗)と成り得る」
 矢倉と同じ上下を濃紺で揃えたスーツに身を固めてはいたが言葉付きや挙動などから、その男には矢倉とは違った意志の強さを垣間見ることが出来た。説得力と言うか……相手を説き伏す為には絶対必要な威圧感というものがあるのだ。そして、年齢的なことを言っても浦野・矢倉らよりは確実に上だろう。
「……もしも彼女が我々の望み得る成果と成り得るのなら、この名前ほど彼女を言い表すに適した名前はないとは思いませんか?」
「はは……ははは、確かにその名前はいいな、名護谷(なごたに)さん」
 カラカラと笑いながら伏井がその男「名護谷」を喝采し、孝山が鋭い目つきでその一連のやり取りを眺めていた。伏井から見れば名護谷も十分に若造の域を出ない部類に含まれているとは言え、名護谷がまとう威圧感を意に介した風がないと言う辺り、伏井もただ年を重ねただけの人当たりの良い老人ではない様だ。
「いや、それ以上に的確なものは挙がらないかも知れないな、どうだろうプロフェッサー?」
 伏井がプロフェッサーへと同意を求めてしまうと、もうそこに異論をあげられる者はない。実質的に伏井と名護谷の、この二人が、この場の……そしてこれから始まる会議の、意志決定の進行役になるだろうことはあらかた推測出来てしまうことだった。
「議論するまでもないことですな、この娘の名前を決められるのはあなた方を置いて他にはないのです」
 ニィと口許に灯す笑みを灯し一つの間を置いて、プロフェッサーが続ける。
「皆さんが賛成ならば、この娘の名前は国見千宗で決定しましょう」
「……国見千宗?」
 恐らく当初に話してみせた通り、「名前」の意味を理解していない女は未だキョトンとした顔のまま首を傾げていた。その意味を教え言い聞かす役割を買って出たのはプロフェッサーでも伏井でもなかった。名前を提案した張本人、名護谷である。
「お前の呼び名だ、……お前はこれから誰かに対して、それが敵であろうと味方であろうと、国見千宗と名乗ることになるんだ、千宗」
 名護谷は千宗の目を見て話ながら、言葉の最後で「千宗」と呼び掛けた。始めは表情のない顔をしていて、「……千宗、千宗かぁ」と、二度三度と名前を反芻する千宗だったが、不意にご機嫌な照れ笑いを見せ、名前の発案者たる名護谷に向けて感謝の言葉を向けた。
「えへへ、良い名前をありがとうございます、名護谷さん」
 まるで名前という形のないものが自分の中に存在しているとでも感じている様に、千宗はギュッと自身を抱きしめながら椅子の上でゴロンゴロンと忙しなく動いていた。そう言う方法で感情として込み上げて来た「嬉しさ」を表現していたのかも知れない。
「ふむ、あっさり名前が決定してしまったと言うこともあるが、……時間にルーズな連中ばかりで困ったものだな」
 プロフェッサーは腕を組み、この場に予定された全員が揃うことのない状況を改めて確認すると、僅かながら「困ったものだ」と言う具合の表情を見せたが、それもすぐに切り替えられる。
「まぁいい……では始めるとしよう。浦野、例のものを矢倉君に」
 パンパンッと二度、それを合図にするかの様に手を叩くとプロフェッサーは大きな声を出した。それは予め打合せた通りであるらしく、浦野はその呼び掛けに顔色一つ変えることはない。自身に科せられた役割を果たすだけである。
「はい、畏まりましたプロフェッサー」
 浦野は矢倉の座る椅子の横まで行くと、上着のポケットから数発の九ミリパラベラム弾を取り出した。矢倉はそうした浦野の一連の動作を特に驚いた様子もなく見ていたが、浦野が続き様に懐からクーガーM8000を取り出してみせるとさすがにギョッとした表情を見せた。そんな矢倉の表情を気に掛けた風もなく浦野は手慣れた様子でマガジンを外し、矢倉の前のテーブルにそれを並べる。
「鑑定しろ……と言いたいわけだよな?」
 矢倉は半ばそれが自分に課せられた役割であると分かりながら、何かをして欲しいと要求することのない浦野に対して念を押したのだろう、……そう確認を取った。
「ええ、お手数ですがお願い致します」
 矢倉は真横に直立不動でいる浦野の顔を一度見上げた後で、胸ポケットから銀フレームの眼鏡を取り出すと、テーブルの上に置かれた品々を手に取る。ふっとその目には真剣さが灯り、鋭くそして物の真価を見通す緻密さがそこに備わる。矢倉の鑑定は一分と立たずに終了した。銀フレームの眼鏡を外し、綺麗に畳んでテーブルの上へと置くと、矢倉は浦野に対してではなく、その場に顔を揃える一同に向け自身の見解を述べた。
「九ミリパラベラムは六発全てが実弾でクーガーのマガジンは中身が空、……クーガーはフレームに軽量化を施した後が見られる以外は基本的に標準のそのままのものだ。……それでこれがどうしたと言うんだい?」
 矢倉は見解を述べ終えると再び自身の真横に直立不同でいる浦野へと顔を上げ、そう尋ねた。浦野は矢倉の問いかけに答えずに、空のマガジンを手に取ると手慣れたで動作で弾を込めていく。そうしてクーガーにそのマガジンを装填すると、無造作に遊底を引き、誰もがその動向を見守る中、千宗の座る座席の横まで歩いて行くと、不意に立ち止まる。
「千宗」
 ついさっき決定したばかりの名前で女を呼ぶと、こころなしか浦野は表情を綻ばせた様に見えた。名前が付いたことに対する祝福の意図があったのかどうかは定かではない。
「うん?」
 呼び掛けに顔を上げる千宗に対し、浦野は大振りな挙動でクーガーを構え、そして躊躇うことなく引き金を引いた。ドンッドンッドンッ……と立て続けに三発、一つの間を置き残りの三発を千宗が声をあげる間もなく撃ち放った。
 初弾は確実に千宗の後頭部にヒットしていた。残りの五発の弾丸も千宗の上半身の至る部分に撃ち込まれ、誰もが目を見開いたまま言葉を失い、そしてその場には静寂が生まれた。
 弾丸の衝撃から千宗はグラリと身体を仰け反らせ床に突っ伏す……と、誰もがそう思った矢先のこと。千宗はタンッと倒れそうになる身体を右手をついて持ち直し、振り向き様に浦野に向けて怒った様な怪訝な表情を見せて言う。
「……何、するの?」
 そうやって振り返った千宗の状態には誰もが驚愕を隠せなかった。各所に撃ち込まれた弾丸により、着ていた服には穴が残っていたが、そこに目に見える傷と言うものが存在しないのだ。そればかりか出血の跡もなく、頭部に直撃した額部分も然り、銃撃を受けた箇所には痣の一つも存在してはいない。
 プロフェッサーはさもそれが当然だと言わないばかりの顔をして、一度小さく頷くと一同に向けて区切りと言わんばかりに口を切る。
「どうだね、お望みならば50AEのデザートイーグルでも、454カスール弾仕様の猟銃でも用意するが?」
 そこに生まれた静寂を切り裂いてパンッ……パンッパンッ……と、真っ先に盛大な拍手をくれたのは名護谷だった。目を見張る表情も次第次第に満足の笑みへと変わり、名護谷は千宗の顔を覗き込む様に銃弾が直撃した額に手を伸ばす。千宗は僅かに緊張した様な面持ちで身動ぎ一つせず名護谷の為すがままになっていたのだが、浦野にクシャッと髪を撫でられるとニコリと顔を綻ばせた。
「驚いたな、……当初の予定じゃ自己修復能力の向上がどうだとか言っていたから多大な期待は掛けていなかったんだが、はは……これは想像以上の代物じゃないか!」
 矢倉もその雰囲気に呑まれた様に表情を変えて、盛大な拍手に便乗する。
 千宗はその拍手喝采が自分に向けられている理由を理解は出来ない様だったが、それが自分自身に向けられていることは理解している様で、取り敢えずペコリペコリと周囲の様子を窺いながら頭を下げていた。恐らく、どうして自身が頭を下げると言う判断を下したのかも理解はしていないだろう。時折、誰かがそうやって頭を下げているのを見て、学習しただけに過ぎないはずだ。
 ……この場に会するみんながみんな、千宗が見せた「結果と言うもの」に対して喝采をしているわけではなかった。複雑な表情をするのは孝山、そして一度もこの場に置いて発言をしていない……この部屋の最も出入り寄りの席に座る男も同様だった。彼らに取ってこの結果は手放しで祝福するに値するものではないらしい。
 ただ、実質上の意志決定を下す伏井・名護谷の二人が結果を喝采していることで、この場で反論をぶつけられる雰囲気にはないだけである。
「それではここまでの、……あー「国見千宗」の能力に関しての資料を配付しよう、浦野!」
 テーブルの下からプロフェッサーが取り出したその資料と呼ぶものは、それが当初ここに集うはずだった人数分のものだと言うのなら、各々一人分が一冊の小冊子にまとめられる程の、資料と言うには相当に分厚いものだった。浦野がそれを受け取り各面々に渡して回ったのだが、それを受け取った面子の表情は軒並み同じ表情をしていた。孝山を始めとした手放しで喝采をしない面々にしても、それは一定の成果として認められるべき結果と受け止められた証拠だったのだろう。




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